となりのAI実装エンジニア

【営業コンサルティング会社(東京都)導入事例】「AIの専門家を、自社の社員と肩を並べて働かせる」という選択。営業代行のビジネスモデルを、足元から組み替えた半年間の記録。

 

企業概要

項目 内容
所在地 東京都渋谷区
事業 BtoB営業代行(インサイドセールス・フィールドセールス・テレアポ・カスタマーサクセス代行)
従業員 約30名
クライアント SaaS、人材、不動産、コンサル、金融など約180社
課金モデル 成果報酬型 約70%/固定型 約30%

導入前の課題:「人を売るビジネス」が、構造的に行き詰まっていた

課題1:現場の業務が「営業以外」に圧迫されている

営業代行ビジネスの本質は「お客様の代わりに、売る」ことです。

ところが現実には、営業職の業務時間のうち実に4〜5割が営業以外の作業に使われていました。

  • ターゲットリストの作成(業界・規模・役職での絞り込み、企業情報のリサーチ)
  • トークスクリプトの個別カスタマイズ
  • 商談メモの起こし、CRM入力
  • クライアントへの日次・週次報告書の作成
  • 失注理由の分類タグ付け
  • 引継ぎ資料の整備

1日のうち、実際にお客様と話している時間は3時間しかない」 これは、営業の生産性を抜本的に削る構造でした。

課題2:クライアントごとに「業界知識」を瞬時に身につける必要

営業代行は、新しいクライアントが入るたびに、その業界・商材の専門家にならなければならない仕事です。

  • SaaSプロダクトの場合:その製品仕様、競合比較、よくある質問
  • 人材サービスの場合:ターゲット企業の採用課題、業界トレンド
  • 金融商品の場合:法令、リスク説明、コンプライアンス

新規クライアントの立ち上げ時には研修期間2〜3週間が必要で、これがそのまま売上立ち上がりの遅れにつながっていました。

課題3:成果報酬型ビジネスの「高離職率スパイラル」

営業代行業界の離職率は**業界平均で年35〜45%**といわれています。

  • 数字でシビアに評価される厳しさ
  • 自社の商材ではなく他社商材を売る心理的負荷
  • 教育コストをかけても短期で離脱

→ 採用→教育→離職の永続ループから抜け出せない構造に。

課題4:「人を増やせば売上が増える」モデルの限界

営業代行は典型的な労働集約型ビジネス。 売上を伸ばすには人を増やすしかなく、しかし採用難と離職で増員が利益に直結しない状況が続いていました。

利益率は業界平均で5〜10%。スケールしても薄利のまま。

課題5:AIへの危機感はあるが、社内に実装人材がいない

経営層には強い危機感がありました。

「AIを使いこなす営業代行に、確実に取って代わられる」 「だが、自社にAIエンジニアが一人もいない」

ChatGPT個人利用のレベルで止まり、業務フローへの実装にまで踏み込めないジレンマを抱えていました。


解決策:「となりのAI実装エンジニア」を、自社の組織図の中に置く

Vision Baseが提案したのは、AIツールを売り込むのではなく、AI実装エンジニアそのものを”自社のメンバー”として配置するという選択でした。

コンセプト:「AIエンジニアを、外注ではなく”社員”のように」

月単位での契約。週3〜5日、クライアント企業のオフィス(またはオンライン常駐)で稼働。経営会議・営業会議・現場ミーティングに参加。**「うちのAI担当」**として全社員から認識される存在へ。

派遣されたAIエンジニア(モデル)

役割 内容
氏名 A.S.(Vision Base所属/生成AI領域経験4年)
稼働形態 週4日常駐+週1日リモート(約160h/月)
ミッション 営業代行業務の全工程をAIで再構築。半年で営業職1人あたり業務時間20%削減&獲得商談数30%増
役職呼称 AX推進室 室長」(社内呼称・名刺発行)

第1〜2ヶ月|現状把握とクイックウィンの量産

最初の2ヶ月は「目の前の負担を、見えるかたちで減らす」ことに専念。

  • 営業職の業務をストップウォッチで実測し、AI化候補を50業務リストアップ
  • 即効性の高いものから着手:
    • ターゲットリスト作成AI:業種・売上規模・キーワードを指定するだけで、Web上から候補企業を1日数千件抽出
    • トークスクリプト生成AI:クライアント商材・ターゲット業界・想定キーマンを入力すれば30秒でカスタマイズ済みスクリプトを出力
    • 商談議事録AI:オンライン商談の録画から、要約・次アクション・CRM入力項目を自動生成

2ヶ月目で営業1人あたり週6時間の業務削減を達成。 現場から「AI担当が来てから、ようやく営業らしい仕事ができる」という声が上がる。

第3〜4ヶ月|業務フローそのものをAIで組み替える

クイックウィンで現場の信頼を獲得した後、より構造的な再設計へ。

  • クライアント別ナレッジAIを全クライアント分構築
    • 商材仕様・競合比較・FAQ・過去の成功/失注パターンを学習
    • 新人オペレーターが着任初日から問い合わせに答えられる水準に
  • 架電優先度AI
    • 過去のアポ獲得率データから、今日かけるべきリストの優先順位をAIが自動算出
    • アポ獲得率が1.7倍
  • クライアント報告書 自動生成AI
    • 日次CRMデータから、クライアント向け報告書を自動ドラフト
    • 担当者は最終チェックのみ。1社あたり40分→5分

第5〜6ヶ月|「営業代行 × AI」の新サービスをクライアントに販売

ここで興味深い展開が起きます。

社内向けに作ったAIノウハウが、そのままクライアントへの新たな提供価値になることに気づき、

  • 「AI×営業代行」プランを新設:従来の人月契約に加え、AIによる効率化込みの単価設定
  • 競合より約20%安い見積もりを提示できるように
  • 新規クライアント獲得数が月平均8社→14社

AI実装エンジニアを社内に置いた結果、自社のサービスメニューが進化した」 これは経営層も予想していなかった副次効果でした。


導入後の効果(運用開始6ヶ月時点)

定量効果

指標 Before After 変化
営業職1人あたり実商談時間/日 約3.0h 約4.8h +60%
ターゲットリスト作成時間(1社) 6時間 15分 ▲96%
クライアント報告書作成時間(1社) 40分 5分 ▲88%
新人オペレーターの戦力化 約3週間 約5日 ▲76%
アポ獲得率(架電→商談化) 2.8% 4.7% +1.9pt
新規クライアント獲得数(月) 8社 14社 +75%
営業職1人あたり粗利 月67万円 月94万円 +40%
6ヶ月離職率 24% 12% ▲12pt
営業利益率 7% 14% 2倍

定性的な変化

▼ 現場の変化

  • 「リストを作る人」「報告書を書く人」という事務的な役割が消滅
  • 営業職は「お客様と話す」「クロージングする」という本来業務に集中
  • 新人がベテランと同じ武器(AI)を持ってスタートできるため、心理的にも追いつきやすい

▼ クライアントの変化

  • 「報告書がリアルタイムで上がってくる」「データの粒度が圧倒的に細かい」と評価
  • 既存クライアントの契約更新率が95%超
  • 競合からのスイッチ案件が増加

▼ 経営の変化

  • 「人を増やすしかない」から「AI×人で生産性を上げる」モデルへ転換
  • 採用ペースを抑えながら売上が伸び、利益率が劇的に改善
  • 経営会議のアジェンダに「AIで次に何を変えるか」が常設

担当者の声(モデルケース)

代表取締役: 「『AIツールを買うか』ではなく、『AIエンジニアというを社内に置くか』という選択をしたのが、最大の意思決定だったと思います。ツールは買えば終わりですが、エンジニアは毎日新しい改善を持ってきてくれる。経営層と現場の橋渡しもしてくれる。社員の一人として接していて、これほどコストパフォーマンスの高い投資はありません」

取締役COO: 「営業代行業界は『人月の壁』を絶対に超えられないと思っていました。でも、A.S.さんが入って半年で、その思い込みが壊れました。人月は超えられる、AIで。今では他社の営業代行会社に対する明確な競争優位を持てています」

インサイドセールス部 マネージャー: 「最初は『AIに仕事を奪われる』と警戒していたメンバーもいました。でも実際は逆で、『やりたかった仕事』だけが残った。雑務から解放された営業がどれだけ強いか、半年で証明されたと思います」

入社1年目 営業職: 「正直、入社時はAIに恐怖心がありました。でも今では、AIなしで営業するのは考えられない。先輩のノウハウもAIに入っているから、私みたいな新人でもベテランと同じ提案ができます」

A.S.(Vision Base派遣エンジニア): 「単発のシステム開発と違い、毎日同じオフィスで現場の声を聞きながら作るから、本当に使われるものができる。クライアントの社員さんから『おはよう』『お疲れさま』と挨拶される関係性は、外注では絶対に作れない価値だと感じています」


なぜ営業代行業界に「となりのAI実装エンジニア」が刺さるのか

理由1:業務がデジタル完結している

営業代行の業務はほぼ全てがデジタル上(CRM、SFA、Web、電話)で完結。AIによる介入余地が極めて大きい業界。

理由2:成果が数字で即可視化される

営業代行はKPIが明確(架電数、アポ獲得率、商談化率、受注率)。AI導入の効果が翌月の数字に直結するため、PDCAが高速で回る。

理由3:人月モデルの限界が見えている

労働集約型ビジネスは、AIによる構造転換のインパクトが最も大きい。人月の壁を超える唯一の方法がAI化。

理由4:クライアントへの転売が可能

社内向けAI実装ノウハウは、そのままクライアントへの提供価値へ昇華できる。自社の競争優位 × 提供サービスの進化の二重効果。

理由5:AIエンジニアを採用するのは事実上不可能

AIエンジニアの採用市場は超売り手市場。派遣型で社内配置するモデルが、現実的な唯一解。

 

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